きみは小鳥のさえずりを聞いた事があるか

 

序章 さえずりは突然に

”あんたが子どもの頃 小鳥のさえずりのような美声だった”

 

たまに母は思い出したようにこんな事を言う。そして”でも今となってはすっかり汚い声になって、おまけに酒焼けしそうなくらい酒飲んで”と続くのだがそんな事を言われても声変わりは私には如何ともしがたいし、酒を飲み過ぎるのも私の意志に関係なく体が欲しているのだから多分致し方ない。

 

あなたは小鳥のさえずりを聞いた事があるだろうか。そしてそれに例えられるような声とはどのようなものだろうか。恋人の声?ソプラノ歌手?それとも街ですれ違った見知らぬ人? はたまたこの世のものではないなにか…

ともかく母にその事を言われるたび子ども可愛さにそう聞こえてただけだろうとか自分に子どもが出来たらそう聞こえるのだろうとか考えていたが結局小鳥のさえずりにはこれまで縁がなかったのであった。

 

しかしこの春 ついに私は小鳥のさえずりを耳にすることになる。

 

 

 

1章 天使降臨

 

3月中旬 春の訪れを感じる陽気な昼下がり。大学のレポートを書いていた私はBGM代わりに動画サイトで配信されていたアニメ「氷菓」を流していた。氷菓を見るのはテレビで放送されていた当時 中学生の頃以来2度目だった。

私はヒロインの千反田えるを全書籍・映像作品のヒロインの中で最上位に位置するほど気に入っているのでえるの初登場シーンを楽しみにしつつ、しかし一度見た内容なので画面を視界の端で捉える程度に見ていた。

 

オープニングが終わりいよいよえる初セリフとなる主人公の折木と初めて対面するシーンだ。

 

 

 

 

 

『こんにちは』

 

 

「え」

 

 画面に映る女の子のセリフに思わず返事をしてしまった。

 

 

『あなたって古典部だったんですか?折木さん。』

 

「え」

 

折木でもないのに返事をしてしまった。

さっきから一体どうしてしまったのだというのだろう私は。えるの声を聞く度心がざわつくような、しかし同時に多幸感を感じるようなこの気持ちはなんだ?

もしかして、いや この甘美な唄声こそが

 

 

 

 

 

 

 

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私はついに出会ったのだ

 

しかし前述の通り氷菓は中学生の頃にも見た事がある。なぜ当時はえるの声に対して思うところが無かったのだろうか。

そうだ、中学生の頃周りの女子はみんな可憐な声をしていたのだ。ゆえにえるの声はずば抜けて良いとは思わなかったのだろう。今では周りの女は酒の飲み過ぎでみんな荒れた声になってしまった。母は正しかった。

 

えるの1番可愛いところは外見や仕草でも無く声であるという事実を確認しつつ、なおも氷菓を見進める。目を見開き好奇心を剥き出しにするえる、夏風邪を引きくしゃみをするえる、緊張しながら過去を告白するえる。色々なえるを見る事でえるの声とえる本人がさらに魅力的に感じられた頃 脳内に『天使にふれたよ!』が流れ始めた。

 

 

 ”でもね、会えたよ! すてきな天使に”
 
けいおん!作中歌 『天使にふれたよ!』 から抜粋

 

 

 

もはや小鳥は羽をもがれた。

そして大天使チタンダエルが降臨した。

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私服姿のえる、おにぎりを握るえる、浴衣を着たえる、温泉に入るえる、バスタオルを巻くえる、えるの胸。話数を進めるにつれ大天使チタンダエルへの崇拝は深まる。もはやチタンダエルの威光を遮るものはないと思われた。しかし天使統治の時代は唐突に終わりを迎える。

 

 

2章 女帝の誕生

話も中盤に差し掛かり第8話。この回では新章が始まりそれに伴い新しく入須冬実というキャラが登場する。入須は自分のクラスが文化祭で発表する自主製作映画の試写会を行いそれに後輩であるえるや折木ら古典部を招待する。

入須は氷菓の中でえるに次いで好きなキャラで、レポートが一段落ついたこともあり食い入るように画面を見つめ初登場シーンを今か今かと待ち、しばらくして待望の瞬間が訪れた。

 

 

『ああ、よく来た。』

 

「え」

 

デジャヴ 激しいデジャヴだ

 

 

『ようこそ。本日は招きに応じてくれてありがとう。』

 

「え」

 

デジャヴはすぐに確信へと変わった。大脳辺縁系を撫でられるようなこの感覚は間違いない。まさか2目がこんな近くにいるとは想像もしていなかった。

 

 

 

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新勢力 女帝イリ=スフユミ誕生。そして後に100年戦争と呼ばれる血で血を洗う戦いが始まった。

 

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3章 100年戦争

入須はえるとは対称にクールでかつ顔・声・胸と三拍子揃ったキャラでありこの時点でえるから鞍替えしたオタクも多かったと思う。しかしこの章では冷徹で嫌な役回りを貰っており際立って良い印象は無かった。だが女帝は次章の文化祭編で軍才かわいさを発揮し始める。

 

手品に感心する入須、手芸部のぬいぐるみを買う入須、えるにお願いをされてたじたじになる入須、心配そうな入須、優しく微笑みかける入須。前章が終始クールなキャラだっただけにそのギャップが凄まじい。あざとい。元よりポテンシャルは高いのだ。前章では苦手意識を抱いていたオタクもみんな入須を好きになったと思う。スフユミ帝はエル教を邪教と断定し着実に排斥していった。

 

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たじたじになる入須 かわいい。ちなみに左下はえるの頭

 

対するえるもまだまだ勢いは衰えない。メイド服を着たり料理対決で腕を見せ得意げになったり目のハイライトが消えたり。入須もあざといがえるは1話から終始あざとかった。

 

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着れば無条件で魅力度5億%増しとなるため現在ではヒロイン論争にメイド服を持ち込むのはレギュレーション違反とされる

 

文化祭編では両者互いに譲らない激しい攻防となった。しかし終盤となった短編編に入ると入須は画面から完全にフェードアウトしてしまった。えるはメインヒロインの祝福を受け登場シーンが増加。極めつけは初詣回で着物を見せびらかすシーンで完全決着。

 

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着れば無条件で魅力度5億%増しとなるため現在では以下略

 

氷菓第20話 スフユミ帝国滅亡。ここに100年戦争は終結した。現実時間に直すとアニメ13話分の永きに渡る戦争であった。

 

終章 嫁・おぼえていますか

物語もいよいよ最終話。ラストは折木がえるに自分の想いを打ち明けかける…といったもどかしさが残る終わり方なのだが、氷菓らしい良い終わり方であったと思う。

そう、聴けば天にも昇る心地を味わえたえるの声と共に歩んできた氷菓が終わってしまったのだ。えると折木の物語はこれからも続く。しかし一視聴者である私とえるはここでお別れだ。歴史は繰り返す。ハルヒが終わった時オタクは長門と会えない悲しみで寝込んだしエヴァが終わった時もオタクはレイと会えない悲しみで寝込んだ。私も先人に倣い寝込もうかと思った。しかし私の脳内に再度『天使にふれたよ!』が流れ始めた。

 

 

”卒業は終わりじゃない これからも仲間だから”

 

『天使にふれたよ!』 から抜粋

 

 

けいおんはいつも私を導いてくれる。あずにゃんはずっと軽音部の後輩だしえるはずっと私の中の天使だ。それでいいじゃないか。

 

アニメ終了そつぎょうは終わりじゃない。これからも・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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ねぇ 思い出の画像カケラに 名前をつけて保存するなら

 

 

 

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”宝物”がぴったりだね

 

 

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そう メモリの容量がいっぱいになるくらいに過ごしたね ときめき色の毎日

 

 

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なじんだ制服と上履き

 

 

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ホワイトソースのシミらくがき

 

 

 

現実あしたの入り口に 置いてかなくちゃいけないのかな

 

 

 

 

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でもね、会えたよ!すてきな天使に

 

 

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卒業は終わりじゃない これからも

 

 

 

 

 

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大好きって言うなら

 

 

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大大好きって返すよ

 

 

忘れ物もうないよね ずっと 永遠に

 

 

 

 

 

 

 

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今期はイエスタデイをうたっての榀子ちゃんが可愛いなと思いました。

ではさようなら